試合中も笑える。ピンチに動じない。
「大きな試合における勝つか、負けるか…という瞬間は落ち着き、プレーの精度が求められます。僕はそうした場面を多く経験しているので、キャリアの少ない若い選手をガイドできると思っています」
TJ・ペレナラ。ラグビー王国ニュージーランド出身の29歳だ。
2013年からは自国のナショナルチームであるオールブラックスへ入り、攻めの起点となるスクラムハーフでレギュラーを争ってきた。テストマッチと呼ばれる代表戦の前には、国のルーツをなすマオリ族の舞踏「ハカ」をリードする。
2021年2月からNTTドコモに加入し、今季のトップリーグでも別格のプレーを見せている。鋭いランでスコアを演出したり、自陣ゴールエリアで相手のトライを防いだり。長らく下部リーグとの昇降格を強いられたクラブにあって、史上初の開幕3連勝に貢献したのがこの男だ。
「特にハイレベルな試合では、一貫性を持ってプレーできればどんなチーム相手でも勝つチャンスが巡ってきます」
この思いを体現したのは3月6日。東大阪市花園ラグビー場での第3節である。
試合終盤、対するリコーに17―17と同点にされ、直後に味方が反則を犯す。流れは悪化したが、背番号9は動じない。相手のミスや味方の好守を経て、自陣中盤左でマイボールを確保。その少し右へ接点を置くと、周辺にいた同僚のフォワードへ「Fight! Fight!」と連呼し、さらに右の広いスペースへ走り込ませる。
指示を受けた1人は、フランカーの佐藤大朗ゲーム主将だ。もともとペレナラがキックを蹴るのを想定して接点の左で壁役を務めようとしたが、ペレナラの声に従う。刹那、NTTドコモは右へパスを回しそうに映った。
違った。佐藤たちが「Fight! Fight!」の声で右へ動くや、ペレナラは左の狭いスペースをえぐり、一気に左へ展開。タッチライン際にいた南アフリカ代表ウイング、マカゾレ・マピンピが大きく突破し、最後はマピンピの援護についたペレナラがラストパスを得てインゴールへ飛びこんだ。
22―17。銀髪の騎士は叫んだ。
「最後の場面だからと何か特別に意識したり、考えたりはしません。前半だろうが、後半だろうが、常にスピードを上げたり、スペースへボールを運んだりするチャンスを探しています」
周りを輝かせる一流を超一流と定義すれば、ペレナラもその隊列に入る。
コンビネーションの練習で不具合があった際、ペレナラの方から「いまのは僕のミスだ」と謝ることもある。超一流は原則、驕らない。極限状態で「Fight! Fight!」と戦士を動かせるだけの信頼関係を、ペレナラは技術や身体能力だけに頼らずに築いた。
佐藤はある日の練習後、ペレナラと1対1の攻防セッションを居残りで実施。接点回りを駆け抜ける名人を相手にすることで防御力を高めようとした。いくつかの抜き合いをして、その様子を収めた映像も一緒に確認する。佐藤がペレナラに礼を言うと、こう応じたそうだ。
「僕にとってもいいトレーニングになった。ありがとう」
「大きな試合における勝つか、負けるか…という瞬間は落ち着き、プレーの精度が求められます。僕はそうした場面を多く経験しているので、キャリアの少ない若い選手をガイドできると思っています」
TJ・ペレナラ。ラグビー王国ニュージーランド出身の29歳だ。
2013年からは自国のナショナルチームであるオールブラックスへ入り、攻めの起点となるスクラムハーフでレギュラーを争ってきた。テストマッチと呼ばれる代表戦の前には、国のルーツをなすマオリ族の舞踏「ハカ」をリードする。
2021年2月からNTTドコモに加入し、今季のトップリーグでも別格のプレーを見せている。鋭いランでスコアを演出したり、自陣ゴールエリアで相手のトライを防いだり。長らく下部リーグとの昇降格を強いられたクラブにあって、史上初の開幕3連勝に貢献したのがこの男だ。
「特にハイレベルな試合では、一貫性を持ってプレーできればどんなチーム相手でも勝つチャンスが巡ってきます」
この思いを体現したのは3月6日。東大阪市花園ラグビー場での第3節である。
試合終盤、対するリコーに17―17と同点にされ、直後に味方が反則を犯す。流れは悪化したが、背番号9は動じない。相手のミスや味方の好守を経て、自陣中盤左でマイボールを確保。その少し右へ接点を置くと、周辺にいた同僚のフォワードへ「Fight! Fight!」と連呼し、さらに右の広いスペースへ走り込ませる。
指示を受けた1人は、フランカーの佐藤大朗ゲーム主将だ。もともとペレナラがキックを蹴るのを想定して接点の左で壁役を務めようとしたが、ペレナラの声に従う。刹那、NTTドコモは右へパスを回しそうに映った。
違った。佐藤たちが「Fight! Fight!」の声で右へ動くや、ペレナラは左の狭いスペースをえぐり、一気に左へ展開。タッチライン際にいた南アフリカ代表ウイング、マカゾレ・マピンピが大きく突破し、最後はマピンピの援護についたペレナラがラストパスを得てインゴールへ飛びこんだ。
22―17。銀髪の騎士は叫んだ。
「最後の場面だからと何か特別に意識したり、考えたりはしません。前半だろうが、後半だろうが、常にスピードを上げたり、スペースへボールを運んだりするチャンスを探しています」
周りを輝かせる一流を超一流と定義すれば、ペレナラもその隊列に入る。
コンビネーションの練習で不具合があった際、ペレナラの方から「いまのは僕のミスだ」と謝ることもある。超一流は原則、驕らない。極限状態で「Fight! Fight!」と戦士を動かせるだけの信頼関係を、ペレナラは技術や身体能力だけに頼らずに築いた。
佐藤はある日の練習後、ペレナラと1対1の攻防セッションを居残りで実施。接点回りを駆け抜ける名人を相手にすることで防御力を高めようとした。いくつかの抜き合いをして、その様子を収めた映像も一緒に確認する。佐藤がペレナラに礼を言うと、こう応じたそうだ。
「僕にとってもいいトレーニングになった。ありがとう」