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女子ゴルフ最終戦で起こったドラマ。一度は諦めた稲見萌寧の賞金女王と、三ヶ島かなが決めた2年越しのリベンジ

山西英希

2021.11.29

逃げ切りで賞金女王に輝いた稲見。今季だけで9勝を挙げ、史上最高の2億5519万2049円を稼いだ。(C)Getty Images

 52試合に及んだ国内女子ツアーの2020-21シーズンがついに閉幕した。

【動画】賞金女王に輝いた稲見のインタビュー映像をチェック! その目には涙も…

 最終戦となった『JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ』は、11月28日に大会全日程を終了。三ヶ島かなが通算11アンダーで悲願のツアー初優勝を飾ったが、この日の主役は間違いなくシーズン9勝を挙げ、初の賞金女王のタイトルを獲得した稲見萌寧だった。

 100点満点としてシーズンを終わらせるためには、是が非でも最後のピースを埋めなければならなかった。そのピースとは賞金女王のタイトルだ。

 今年に入ってから順調に優勝を重ね、上位に入る回数も着実に増やしていった稲見。8月に開催された東京五輪では銀メダルも獲得し、9月に開催された『日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯』では初の公式戦優勝も飾った。

 残る目標は賞金女王だけだが、『NOBUTA GROUPマスターズGCレディース』でまさかのアクシデントに襲われる。立っていられないほどの激痛が腰に走ったのだ。

「ぶっちゃけ言うと、その試合で棄権を決めたときは賞金女王を諦めました」と稲見。苦汁の決断だったが、ここで無理しなかったことで終盤の4試合に参戦できたと振り返る。
 
 毎試合痛み止めを服用しながらも『TOTOジャパンクラシック』では2位に入り、『伊藤園レディスゴルフトーナメント』では優勝した。しかし、体を酷使していたことは否めない。

 プロ4年目だが、開幕戦からフル参戦したのは今年が初めてだった。しかも、自分が納得するまで何時間でもボールを打ち続ける練習スタイルに加えて、ハードなトレーニングも習慣化されているだけに、若いとはいえ、いつ体が悲鳴を上げてもおかしくなかった。

 最終戦も腰痛を抱えた状態での参戦となったが、稲見が賞金女王になるには、ランキング2位につけている古江彩佳が3位以下になるか、単独2位でも自分が13位以内に入ることだった。

 今季好調の選手しか出場できない大会の13位以内は容易ではないが、好材料だったのは、奥嶋誠章コーチが東京五輪以来のキャディを務めてくれたことだった。
 
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稲見が見せた最後の執念。そして三ヶ島の心に“ずっと引っかっていたモノ”とは?