世界が注目した15歳は、哀しき涙を流して北京を去る。北京五輪のフィギュアスケート女子シングルで、まさかの４位となったカミラ・ワリエワ（ロシアオリンピック委員会＝ROC）だ。

　２日前のショートプログラム（SP）では首位に立ったワリエワだったが、フリースケーティング（FS）でそのキレは失われた。米放送局『NBC Sports』で解説を務めた元米代表のジョニー・ウィアーが「あんなにミスをする姿は見たことがない」と嘆くほどに得意のジャンプで失敗を繰り返した天才は、涙を流しながらリンクを降りた。

　SP直前にドーピング使用が世間に流れ、世界的な騒動の渦中にいたワリエワ。その精神状態が穏やかでなかったのは想像に難くない。ゆえにロシア・フィギュアスケート界のレジェンドも、15歳の失敗をかばっている。

　FS後に地元メディア『Sport Express』のコラムを更新した元ロシア代表のエフゲニー・プルシェンコは、「まるでドラマのようだった。単なる大会ではない」と競技全体を回想。そのうえで、ワリエワが転落した理由を論じた。

「カミラは極度の緊張に耐え切れず、金メダルだけでなくメダルそのものを手にすることすらできなかった。彼女は男子選手ですら耐えられるわけがないプレッシャーにさらされていた。それは間違いない。もちろん、素晴らしい演技を見せたトゥルソワとシェルバコワの後に、氷上に出たことも敗因のひとつだったように思うが、15歳の少女が背負った重圧に何を言うべきか……」
  　さらに「今日のカミラは何かが違うと瞬時に分かった。バタついていて、何かが違った」と強調した過去３度の五輪王者は、こうも続けた。

「正直に言って、あそこまでひどいとは思っていなかった。私もジャッジが彼女を４位にしたのは良いことだと思う。カミラにとっては残念だが、北京では、彼女が崩れていくありとあらゆることが起きすぎた」

　外的要因によるパフォーマンの低下を憂いたプルシェンコ。しかし、百戦錬磨の"皇帝"は、悩めるワリエワに再起のためのアドバイスも送っている。

「人生は北京で終わらないということを、彼女は理解しなければいけない。現実を受け止めて、前に進まなければいけないんだ。自分の仕事を続け、新しい４回転を覚えて、次のオリンピックに向けて準備する必要がある。

　私はカミラがこれからも高いレベルで滑れるかどうかが、気になるよ。私の意見を言わせてもらうと、彼女はやっぱりトップスケーターに必要なものをすべて持っていると思う。あの子は本当に特別だ」

　ロシア・フィギュアスケート界のレジェンドに、ここまで言わせるのだから、やはりワリエワの天賦の才は間違いない。そんな彼女は４年後に19歳となるが、ふたたびオリンピックの大舞台で滑れるのだろうか。

構成●THE DIGEST編集部

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