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【名馬列伝】大一番で魅せた華麗なる逃走劇! マヤノトップガン、常識外れの年13戦で年度代表馬に駆け上がるまで<前編>

THE DIGEST編集部

2022.08.13

デビュー年に13戦を走り切り、菊花賞と有馬記念を制して年度代表馬に駆け上がったマヤノトップガン。年末の大一番では見事な逃走劇を完遂してみせた。写真:産経新聞社

 この2022年の夏、映画『トップガン マーヴェリック』がヒットしている。

 これは、アメリカ海軍戦闘機兵器学校の略称をタイトルにいただき、1986年に公開された『トップガン』の、36年ぶりとなる続編である。

 そして、そのヒット映画から名付けられた1頭の栗毛馬が1995年にデビューする。GⅠレース4勝を挙げた名馬、マヤノトップガンである。

【動画】マヤノトップガンがGⅠ初制覇を果たした菊花賞! 鞍上・田原成貴の投げキッスも話題に
 マヤノトップガンは、三冠馬ナリタブライアンなど数々の名馬を出したブライアンズタイムを父に持ち、北海道・浦河町にある川上悦夫の牧場で生まれた。

 栗東トレーニング・センターの坂口正大厩舎に預託されたが、足元にソエ(幼駒に見られる脚部の炎症)が見られたため、デビューは3歳の春にずれ込んだ。

 初戦は1995年の1月、京都の新馬戦(ダート1200m)だった。ダート戦が選ばれたのは、まだソエが収まり切っていないため、芝より脚への負担が少ないほうを選択したためである。

 ここで単勝オッズ1.7倍の圧倒的な支持を受けたデビュー戦だったが、直線で伸びを欠いて5着に敗れる。

 足元の状態を勘案しながら、ダートの1200m戦を使い続けられたマヤノトップガンだが、その後も3着、3着と連敗。ようやく初勝利を挙げたのは3月末の未勝利戦(京都・ダート1200m)だった。

 なおもソエの影響はあったものの、小康状態にあったマヤノトップガンは押せ押せでレースに使われる。ダートの1200m戦で3着を2回重ねたあと、初めて距離を延ばした5月末の500万下(中京・ダート1700m)で2着に7馬身差を付けて圧勝。ようやく素質の片鱗を見せたものの、春のクラシック戦線とは無縁なままだった。

 使い詰めのローテーションのなかでも音を上げないマヤノトップガンを見て、調教師の坂口はついに芝への挑戦を決断する。

 ロイヤル香港ジョッキークラブトロフィー(900万下、中京・芝2000m)を第4コーナーで先頭に立つ積極的な競馬で僅差の3着として上々のレースを見せると、次走のやまゆりステークス(900万下、中京・芝2000m)では先行・差し切りで鮮やかな勝利を収めた。

 1月8日のデビューから半年のあいだに9戦というハードなローテーションをこなしたマヤノトップガンは、菊花賞(GⅠ、京都・芝3000m)制覇という秋への大望を抱きながら短い夏休みに入る。
 
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