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“異色のキャリア”のヴェラアズール。渡辺薫彦調教師が下した英断が大舞台で花開く【ジャパンカップ】

三好達彦

2022.11.29

ジャパンCで3番人気に支持されたヴェラアズール(6番)がGⅠ初挑戦で初制覇を果たした。写真:産経新聞社

 27日、42回目を迎えるジャパンカップ(GⅠ、東京・芝2400m)が東京競馬場で行なわれ、単勝3番人気に推されたヴェラアズール(牡5歳/栗東・渡辺薫彦厩舎)が、1番人気のシャフリヤール(牡4歳/栗東・藤原英昭厩舎)を差し切って優勝。GⅠ初挑戦・初制覇という快挙を成し遂げた。
 
 3着には4番人気のヴェルトライゼンデ(牡5歳/栗東・池江泰寿厩舎)が差し込み、5番人気の"三冠牝馬"デアリングタクト(牝5歳/栗東・杉山晴紀厩舎)、2番人気のダノンベルーガ(牡3歳/美浦・堀宣行厩舎)はそれぞれ4、5着に入着。上位人気の馬が5着までを占める結果となった。

 天皇賞(秋)(GⅠ、東京・芝2000m)を制したイクイノックス(牡3歳/美浦・木村哲也厩舎)や日本ダービー(GⅠ、東京・芝2400m)を制したドウデュースが出走を回避したこともあり、人気は割れに割れた。なかでも人気を集めたのは、昨年の日本ダービー馬シャフリヤール、前走の京都大賞典(GⅡ、阪神・芝2400m)を圧勝して重賞初制覇を達成したヴェラアズール、前走の天皇賞(秋)で僅差の3着に食い込んだダノンベルーガの3頭だった。

 当日早朝の前売りではこの3頭がオッズ4.7倍の1番人気で並ぶ時間帯もあったほどだった。最終的にはシャフリヤール(3.4倍)、ダノンベルーガ(4.2倍)、ヴェラアズール(4.5倍)の順になったが、そのオッズの差はわずかで、いわば"三強対決"というような図式になった。

 続く4番人気のヴェルトライゼンデ(9.5倍)までが"一桁オッズ"で、5番人気のデアリングタクト(13.0倍)からは10倍を超え、上位人気馬とは支持率にやや差が付いた。
 
 前日の早朝に降雨はあったものの、当日の馬場コンディションは、少し時計がかかる「良」。芝が傷んではいるものの、インコースを通った馬が止まらないという傾向は顕著で、最終コーナーで外を回った馬は距離を損する分、やや不利になるトラックバイアスは前週と同様だった。

 レースは予想通りにユニコーンライオン(牡6歳/栗東・矢作芳人厩舎)の逃げでスタート。ヴェルトライゼンデが先行集団に加わり、ダノンベルーガとヴェラアズールは中団、デアリングタクトとシャフリヤールは後方を進んだ。

 向正面に入るとユニコーンライオンがペースを落としたため、馬群は密集した様相で展開。1000mの通過ラップが1分01秒1というのは、トップ・オブ・トップのGⅠのペースとしては極めて遅く、上がりの勝負になる公算が高くなった。

 そして、馬群が一団となって向いた直線。距離ロスを防ごうとしてインを回った馬たちは前が壁になって、なかなか進路を見い出せないでいたが、先行したヴェルトライゼンデが抜け出しにかかり、早めに仕掛けたダノンベルーガがそれに襲い掛かる。

 さらには外を回ったシャフリヤールが一気に脚を伸ばすが、インコースからようやく進路を見つけたヴェラアズールが馬群を縫うように末脚を爆発させる。ゴール寸前まで3頭の激闘が繰り広げられたが、勢いに優るヴェラアズールがシャフリヤールを3/4馬身抑えて栄光のゴールを駆け抜けた。

 先行勢で唯一粘ったヴェルトライゼンデが3着に入り、ようやく"らしい"末脚を繰り出したデアリングタクトが4着に健闘。ダノンベルーガは、シャフリヤールに進路を妨害される(同馬の鞍上クリスチャン・デムーロ騎手は不注意騎乗で騎乗停止処分を受けた)不利もあって、やや差が開いた5着に終わった。

 外国馬では、昨年も5着に入ったグランドグローリー(牝6歳/仏・G.ビエトリーニ厩舎)の6着が最先着。今年も勝負に絡むことはできなかった。
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「芝を使いたい」渡辺調教師が英断に踏み切る