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家族の反対を押し切って騎手になった福永祐一の強い覚悟。“天才”と呼ばれた父が果たせなかった夢を掴むまで

三好達彦

2022.12.29

2018年にダービー初制覇を達成した福永。厩舎スタッフと喜びを分かち合った。写真:産経新聞社

2018年にダービー初制覇を達成した福永。厩舎スタッフと喜びを分かち合った。写真:産経新聞社

 福永祐一騎手(46歳/栗東・フリー)がJRAの2023年度調教師試験に合格。来年2月いっぱいで騎手を引退することになった。

【動画】19度目の挑戦で悲願のタイトルを獲得した福永祐一。『日本ダービー2018』をプレーバック!

 1970年代の中央競馬を知る人たちの口に、必ず“天才”として上る騎手がいる。福永祐一の父、福永洋一さんである。

 まだ競馬学校(千葉県白井市)が開校する前、東京都世田谷区の馬事公苑に騎手の養成所(騎手養成長期課程)があった。岡部幸雄、柴田政人、伊藤正徳という、のちの中央競馬を華々しく盛り上げる名騎手たちが巣立ったことから、1964年入学の生徒は「花の15期生」と呼ばれるが、そのなかに洋一さんの名前もあった。

 試験に一回落第し、1968年に1年遅れで騎手免許を取得した洋一さんは、いきなり14勝を挙げて中央競馬関西放送記者クラブ賞を受賞。2年目は伸び悩んだが、3年目の1970年に86勝を記録して初のリーディングジョッキーに輝く。

 その天衣無縫の騎乗スタイルで「平凡な馬でも、洋一が乗ると別の馬になる」と言われるほどの異能を発揮。この頃から”天才”と持てはやされるようになった。その後、エリモジョージで天皇賞(春)、インターグロリアで桜花賞、ハードバージで皐月賞を制するなど、トップジョッキーの座を確たるものとし、77年には126勝を挙げて野平祐二が持つ年間最多勝利記録を19年ぶりに更新。翌78年はその記録を131まで伸ばした。

 ところが、好事魔多し。1979年の春、洋一さんは大きな落馬事故に巻き込まれて生死の境をさまようことになる。懸命な治療が施されたが重い麻痺が残り、現役引退を余儀なくされた。長男の祐一は3歳になったばかり。まだ物心がつく前のことだった。
 
 毎日、家族の助けを借りながらリハビリに励む父を見ながら育った祐一は、中学時代に騎手になることを決意。母をはじめとする家族の大反対を押し切って受験に臨むことになる。初年度は二次の体力試験の前に骨折して不受験となったが、高校に通いながら翌年再受験して競馬学校騎手過程に合格。高校を中退して、いよいよ本格的にジョッキーへの道へ踏み出した。

 この年次にはJRA初の女性騎手となる細江純子、牧原由貴子、田村真来がいたほか、のちにテイエムオペラオーと数々の偉業を成し遂げる和田竜二、双子の柴田大知・未崎兄弟などが揃い、話題の多い世代。だが騎手免許試験に合格してデビューすることが決まると、あの「洋一の息子」である祐一には別格の注目が集まった。

 洋一さんと騎手仲間だった北橋修二の厩舎に所属して、1996年3月の中京でデビューを迎えた祐一は、一戦目で初騎乗・初勝利を挙げると、二戦目も連勝。JRAで二人目となる派手なデビューを飾ると、マスコミもファンも熱狂をもって彼を迎えた。そして洋一さんを知る関係者の積極的なアシストも受けて、この年、最終的に53勝を記録してJRA賞最多勝利新人騎手に輝いた。
 
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