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世界の“宝物”となったイクイノックス。歴史的名馬に育て上げた陣営の確かな英才教育【ジャパンカップ】

三好達彦

2023.11.29

イクイノックスがジャパンCを制覇。総獲得賞金で歴代トップに浮上した。写真:産経新聞社

 11月26日、第43回 ジャパンカップ(GⅠ、東京・芝2400m)が行なわれ、単勝オッズ1.3倍という圧倒的な支持を受けたイクイノックス(牡4歳/美浦・木村哲也厩舎)が、2着の三冠牝馬リバティアイランド(牝3歳/栗東・中内田充正厩舎)に4馬身差を付けて圧勝。世界ナンバー1ホースの力を見せつけた。

 3着には昨年の牝馬クラシック二冠のスターズオンアース(牝4歳/美浦・高柳瑞樹厩舎)、4着には昨年のダービー馬ドウデュース(牡4歳/栗東・友道康夫厩舎)がそれぞれ入り、5着には天皇賞(春)などGⅠレース3勝のタイトルホルダー(牡5歳/美浦・栗田徹厩舎)が粘り込んだ。

 レースはイクイノックスがスムーズに3番手で最初のコーナーへ入った時点で、「勝負あった!」という展開だった。1枠2番に入った同馬にとって、ほとんど唯一の不安は、出遅れて馬群に包まれることだった。その点をクリアすれば、もう負ける要素はない。あとはどんな勝ち方をするのか。筆者はそう思いながらレースを見ていた。
 
 4枠8番に入ったパンサラッサ(牡6歳/栗東・矢作芳人厩舎)が予想通り大逃げを打つと、タイトルホルダーは離れた2番手につく。その直後をイクイノックスがキープし、リバティアイランドとスターズオンアースが4~5番手を追走と、有力視された馬たちがみな取りたい位置で、したい競馬で勝負にいったことで、有利も不利もなく、レースはなかなか目にすることのない美しさで進んでいった。

 先頭を独走するパンサラッサが刻んだ1000mの通過ラップが57秒6の超ハイペース。後続とは10数馬身ほどの差を付けたまま、最終4コーナーを過ぎ、ラストの直線へ向いた。

 残り400m付近で(手綱を)持ったままのイクイノックスがタイトルホルダーを交わして2番手に上がると、ここで鞍上のクリストフ・ルメール騎手が1回だけ「見せムチ」でゴーサインを出した。

 すると、イクイノックスは瞬時に反応。脚色が鈍ったパンサラッサを余裕の手応えで抜き去り先頭に躍り出る。猛追するリバティアイランドやスターズオンアースをまったく寄せ付けず、ぐんぐん加速した怪物は圧巻の勝ちっぷりでゴール。最後の50mほどは、ルメール騎手が手綱を抑えて流すほどの楽勝だった。
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三冠牝馬リバティアイランドを子ども扱い