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「康太が後押ししてくれた」落馬事故で死去の仕事人が太鼓判押したジャスティンミラノ。ダービー3勝・敏腕トレーナーが号泣した驚愕レコードVの舞台裏【皐月賞】

三好達彦

2024.04.17

ジャスティンミラノ(中央)がゴール前の接戦を制し、牡馬クラシックの一冠目を手にした。写真:産経新聞社

 4月14日、牡馬クラシック第一弾の皐月賞(GⅠ、中山・芝2000m)が行なわれ、単勝2番人気のジャスティンミラノ(栗東・友道康夫厩舎)が、7番人気のコスモキュランダ(美浦・加藤士津八厩舎)の猛追を抑えて優勝。デビュー3戦目にして、無敗で一冠目を手にした。

 積極的にレースを進めた3番人気のジャンタルマンタル(栗東・高野友和厩舎)は粘り込んで3着。牝馬ながら1番人気に推されたレガレイラ(美浦・木村哲也厩舎)はよく追い込んだものの6着に敗れ、凱旋門賞馬ソットサス(Sottsass)の全弟として話題になった5番人気のシンエンペラー(栗東・矢作芳人厩舎)は伸び切れず5着に終わった。

 勝負の女神、競馬の神様は、時として度が過ぎた悪戯をすることがある。

 2009年のNHKマイルカップ(ジョーカプチーノ)、昨年のマイルチャンピオンシップ(ナミュール)とGⅠレースを2勝し、JRA通算勝利数『803』を記録していた藤岡康太騎手が事故に遭ったのは4月6日の阪神競馬・第7レースのことだった。第3コーナーで騎乗馬が前の馬に接触して落馬した同騎手は意識不明のまま救急搬送されたが、治療の甲斐なく意識が戻ることはなく、10日夜に息を引き取った。

 その4日前、フリーになってから友道厩舎で日々の調教を手伝うようになった藤岡康太騎手。普段からたびたび調教で騎乗しており、今回の皐月賞を迎えるにあたっても1週前追い切りで手綱を取っていたジャスティンミラノが皐月賞を制覇するシーンを見ずに彼は逝ってしまった。
 
 レースは激烈なものとなった。前日までは週中の雨の影響が残ったか、「良」発表とはいえ、かなりタフで時計のかかる馬場状態だった。しかし当日は好天で気温が上がったこともあり、いわゆる「高速馬場」へと一変。ちなみに最終レース(L、芝1200m)の勝ち時計は1分07秒1と、あのロードカナロアが2012年のスプリンターズステークス(GⅠ、中山・芝1200m)で記録したコースレコード(1分06秒7)に0秒4差に迫るほど、スピードが出る速さだった。

 それを踏まえたうえで、少々ハイペースになっても、後方の馬もなし崩しに脚を使わされるため後方からの追い込みは利きづらく、逆に前へ付けた馬が残りがちになるのがセオリーだ。逃げ・先行馬が顔を揃えた今年のレースでも、その馬場傾向を掴んで前へポジションを取りにいくことが勝利へのマストとなっていた。
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