専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
その他

【名馬列伝】競馬の枠を超えたディープインパクトの衝撃。その「成功」はまさに唯一無二

三好達彦

2021.07.22

 調教師などに任せるオーナーがほとんどだが、金子氏は自身の目で確かめ、見初めた馬しか所有しないことで知られる。氏の一番の判断基準は「目の輝き」だというが、ディープインパクトの目は「吸い込まれるような輝きだった」と述懐している。馬体の見栄えの良さに左右されない金子オーナーの感性の豊かさが、ディープインパクトの稀なる才能を見出したわけだ。

 2004年12月のデビュー戦を楽勝したディープインパクトが、「これは明らかに普通の馬ではない」と決定的に印象付けたのは、3戦初戦として臨んだ若駒ステークス(オープン、京都・芝2000m)だった。

 7頭立てとなったこのレース。ディープインパクトはゆったりと最後方を進み、直線へ向いた時にはまだ先頭と10馬身ほどの差があったが、鞍上の武豊からゴーサインを出されると、恐るべき瞬発力を繰り出して瞬時に先頭に躍り出て、ノーステッキで2着に5馬身差をつけて悠々とゴール。この衝撃の圧勝劇によって、マスメディアが「三冠は確実」と報じるようになった。

 あとはご存じのとおり。スタートで躓いて大きく体勢を崩した皐月賞、1周目のスタンド前でエンジンがかかってヒヤリとさせた菊花賞という、通常の馬であれば”ピンチ”と映るシーンもラクラクとクリアして、難なく無敗のクラシック三冠制覇を成し遂げた。無人の野を行く、ならず、無馬のターフを行くとでもいうべき、そのすべてがまさに敵なしの勝ちっぷりだった。
 
 しかし、その次に臨んだ有馬記念では「今日は飛ぶような走りではなかった」(武豊)ディープインパクトが、当時はまだフランスを主戦場としていたクリストフ・ルメールが手綱をとって予想外の先行策に出たハーツクライに半馬身届かず、半馬身差の2着に敗退。結局、引退まで国内で敗れた日本馬はハーツクライただ1頭となる。

 4歳になり、天皇賞(春)、宝塚記念とGⅠも事も無げに連勝したディープインパクトは、いよいよ競馬ファンならずとも期待を寄せていたフランスの凱旋門賞(GⅠ、ロンシャン・芝2400m)に挑戦する。

 日本からは100人以上に及ぶマスメディア以外に、数百人ともいわれるファン”ディープ応援団”が大挙して押し寄せ、欧州にはない習慣である”応援馬券”として、また土産として彼の単勝馬券を大量に買い込んだため、競馬場内でのディープインパクトの単勝オッズが1.1倍を示した瞬間もあり、パリの競馬ファンや関係者を驚かせたという。

 日本で見守るファンに向けてはJRAや映画館がパブリックビューイングを開くほか、CSの専門チャンネル以外に、地上波でNHKとフジテレビ系列が生中継するという、何もかもが異例の事態を引き起こす人気ぶりだった。

 しかし、結果は残念なものとなった。
 

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号