今年は2月にサウジアラビアへ遠征し、ターフスプリント(G3、キングアブドゥルアズィーズ・芝1351メートル)で勝利を収めた。しかし、帰国後初戦となる前走のヴィクトリアマイル(G1、東京・芝1600メートル)では、3コーナーでつまずくアクシデントもあって5着に敗れ、安田記念では4番人気にとどまっていた。
しかし、中2週という厳しいローテーションのなかでコンディションを落とさず調整した厩舎スタッフのアシストはもちろん、大舞台で無類の勝負強さを発揮する池添謙一騎手の、ロスを避けつつ馬場状態のいい外目から追い込むという絶妙なコース取りもあって、混戦に断を下した。
ここまで1600メートル以上の距離を走ったことはないが、血統から考えると中距離をこなしても何の不思議もなく、今後の進路についても注目の存在となった。
一方、敗れはしたものの、ドバイ遠征から”ぶっつけ”で臨んだシュネルマイスターが、その影響を感じさせない仕上がりの良さで勝ち負けに持ち込んだのは流石というべきだろう。国内でいまだ馬券圏外に落ちたことがない安定した走りは健在だ。
3歳時に毎日王冠(G2、東京・芝1800メートル)を制し、弥生賞(G2、中山・芝2000メートル)でも2着しているように、こちらも中距離をターゲットに据えたところで無理筋とは言えない。秋は天皇賞(G1、東京・芝2000メートル)を選択しても面白いだろう。
3着のサリオスは、2歳チャンピオンになり、皐月賞(G1、中山・芝2000メートル)と日本ダービー(G1、東京・芝2400メートル)を連続2着とした能力の高さを久々に発揮した。馬体重は前走比-22キロで、グッと絞り込まれたことで走りにシャープさが戻った印象で、馬場状態が渋らなければ軽視は禁物だ。
1番人気のイルーシヴパンサーは、8着に敗れたものの、上がり3ハロンは32秒6という最速タイムを記録しており、走破タイムも勝ち馬と0秒2しか差がない。敗因は“G1の壁”というよりも、スローペースのなかでの位置取り、コース取りのロスに求めるのが妥当だろう。流れに左右されるところはあるものの、これからも注視すべき馬であることに変わりはない。
文●三好達彦
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