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【名馬列伝】“坂路の申し子”ミホノブルボンの強烈な輝き! 「無敗のダービー馬」はなぜ悲劇的な敗戦を喫したのか?[後編]

三好達彦

2022.07.02

 閑話休題。
 この年の春、マスコミやマニアックなファンのあいだで話題に上ったことがある。それはミホノブルボンの「尻」についての話だ。

 サラブレッドの尻といえば、丸みを帯びた美しい曲線を想像する人が多いだろう。しかしミホノブルボンの尻は異常なまでに発達し、真後ろから眺めると臀部の筋肉が4つに割れているように見えたのである。鍛えられて6つに割れた人の腹筋を「シックスパック」と呼ぶが、ミホノブルボンの尻はそれになぞらえれば「フォーパック」ということになろうか。
 
 彼を注視していたファンやマスコミ関係者は、調教で坂路コースを日に何度も駆け上がっていた、のちに「坂路効果」と言われるようになる圧倒的な成果と、そうしたスパルタトレーニングにへこたれなかったミホノブルボンの怪物ぶりにあらためて気付かされたのである。

 北海道・早来町の吉田牧場で夏の休養期間を過ごすと、10月の京都新聞杯(GⅡ、京都・芝2200m)から始動することになった。

 馬体は前走比+14㎏とさらにたくましくなったミホノブルボンに寄せられる注目と支持率はさらに高まり、単勝オッズ1.2倍という人気を背負うなか外連味のない逃げを打つと、ここでも彼を追走してきたライスシャワーに1馬身半差をつけ、芝2200mのJRAレコードを0秒1更新する勝利を挙げた。ライスシャワーとの差は日本ダービーの時よりも詰まってはいたが、秋初戦としては上々の走りだった。

 そしていよいよ迎えるのは、三冠目の菊花賞(GⅠ、京都・芝3000m)である。

 ここになってまた、ミホノブルボンの”距離不安説”が取り上げられるようになった。しかし戸山調教師は、彼が「本質的にはスプリンターで、長距離が向く馬ではない」と認めたうえで、「人間の欲で3000mを走らせるのは正直、可哀想だと思っている」との考えを表してもいた。

 そしてさらに厄介だったのは、京都新聞杯では出遅れてハナを奪えなかったキョウエイボーガンが、菊花賞ではあらためて「何が何でも逃げる」と宣言したこと。このときにはすでにミホノブルボンは逃げ馬として認知されていたため、キョウエイボーガンが逃げた場合、どのような展開になるかに不透明な部分ができてしまったのである。
 
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