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競馬

【名馬列伝】史上2頭目の偉業を成し遂げたゼンノロブロイ 挫折に次ぐ挫折を乗り越えた秋古馬三冠

三好達彦

2025.08.30

 秋の中長距離三冠、最終関門となる有馬記念は3つのなかで最も苦しいレースとなった。そのキーマンとなったのは、非常にクレバーなジョッキーとして知られた佐藤哲三が乗る、凱旋門賞(仏G1)帰りのタップダンスシチーだった。

 9番枠から積極的な飛び出しでタップダンスシチーが先頭を奪うと、最内の1番枠から出たゼンノロブロイは出たなりでスムーズに2番手をキープした。そのあとはタップダンスシチーの佐藤が自在にペースを操りながら馬群を先導し、ゼンノロブロイもそれに付かず離れずしながら折り合って追走する。

 そして直線へ向くと、気持ちよく逃げたタップダンスシチーは二の脚を使って粘りに粘る。ゼンノロブロイもペリエに激しく首を押されながら猛追。2頭の息詰まる叩き合いが繰り広げられるが、最後の50mでゼンノロブロイがタップダンスシチーを捉え、死力を尽くして半馬身先着。2000年のテイエムオペラオー以来、史上2頭目となる秋のトリプルクラウンを達成し、ボーナスの2億円を手にしたのだった。
 
 その後、翌年の宝塚記念(GⅠ、阪神・芝2200m)を3着としたのち、武豊を背に英インターナショナルステークス(G1、ヨーク・芝2080m)に出走。後方から進んだゼンノロブロイは鋭い末脚を繰り出してゴール手前で先頭に立ったものの、さらに後ろから追い込んできたゴドルフィン所属のエレクトロキューショニストに僅かクビ差交わされ、悔しい2着に敗れた。日本馬が欧州のトップオブトップにもっとも際どく迫ったレースのひとつであった。

 帰国後のゼンノロブロイは、天皇賞(秋)がヘヴンリーロマンスの2着、ジャパンカップがアルカセットの3着、ラストランとなる有馬記念はレース中に捻挫を発症していたこともあってハーツクライの8着としてターフを去った。

 種牡馬となったゼンノロブロイは初年度産駒からオークス(GⅠ)をアパパネと同着優勝を飾ったサンテミリオンを出すなどして活躍。2021年度まで種牡馬として活躍し、翌年9月、心不全のために死亡した。22歳だった。

 生真面目と呼べるほど懸命に走り続け、わずか半シーズンではあったが、王者と呼ばれるに相応しい輝きを放ったゼンノロブロイ。競馬にたらればは禁物だと言われるが、もし英インターナショナルステークスでクビ差をひっくり返していたら、その名はより強く深くファンの胸に刻まれる馬になっただろうと思わずにはいわれない。(文中敬称略)

文●三好達彦

【動画】秋の中長距離三冠を成し遂げたゼンノロブロイ

【名馬列伝】大種牡馬サンデーサイレンス「最初の大物」バブルガムフェロー 3歳馬にも門戸解放された天皇賞で完遂した革新的“GⅠ挑戦ローテ“
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