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ラグビー

熱狂の1か月半でラグビー文化は根を張った。4年前の"五郎丸フィーバー"と同じ道は辿らない

吉田治良

2019.11.06

 合宿を通して、スクラムの精度が飛躍的に高まったことも大きかった。長谷川慎スクラムコーチの下、芝生の状態やスパイクのポイントの長さにまでこだわった繊細かつ強固なパックは、セットピースを強みとするアイルランドやスコットランドにも押し負けなかった。

 そして、「1ポイント」ヘの執着心。4年前のW杯で、歴史的な3勝を挙げながら決勝トーナメントに進めなかった悔しさを知る、リーチ・マイケル主将をはじめとするメンバーは、目の前のひとつの勝利に決して浮かれることなく、常にその先を見据えていた。サモア戦の終了間際にボーナスポイントを得られる4トライ目を奪えたのも、そうした姿勢があったからに違いない。

 もちろん、少なからずホームアドバンテージもあった。とりわけ日程面で優遇されていたし、開幕戦の相手が格下のロシアだったことも幸いした。

 SOの田村優が、「早く終わってほしいとずっと思っていた」と試合後に告白するほどガチガチに緊張し、チームとしてミスを連発した開幕戦の相手が、仮にスコットランドやアイルランドだったらと思うと、いまさらながらぞっとする。
 
 いずれにしても、日本はティア2の国として初めて、プール戦全勝で決勝トーナメントに進出するという快挙を成し遂げた。なにより、アイルランド戦を除く3試合でボーナスポイントを奪って勝利したのだから、文句の付けようがない。

 しかし、「史上最強」の日本代表も、ベスト4には勝ち上がれなかった。準々決勝では、優勝した南アフリカのフィジカルに太刀打ちできず、パワーで圧倒された。

「優勝を目標にしているチームと、必死でもがいてプール戦を突破してきたチームとの差が出た」

 CTBの中村亮土の言葉通りだろう。日本は結局、プール戦を突破するまでの燃料しか、その車体に積んでいなかったのだ。選手層の薄さは明らかで、事実、登録メンバー31人のうち5人もの選手が、一度も今大会のピッチに立てなかった。つまり、厳しい見方をすれば、彼らはジョセフHCが全幅の信頼を寄せられるバックアッパーではなかったということだろう。後半開始直後に、決まってFW1列目を入れ替えて、フレッシュな状態のスクラムを維持した南アフリカとの、ここが大きな差だった。

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