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【名馬列伝】トウカイテイオー”奇跡の復活劇”。「中364日でのGⅠ勝利」で波乱万丈の現役生活に幕引き【後編】

三好達彦

2022.03.27

 しかしこの日のテイオーが見せた走りは、怪我を含めて順調さを欠いてレース間隔が1年も空いた馬のそれではなかった。

 中団の後ろ目で伸びやかなフットワークを披露しながら気持ちよさそうに追走。2周目の3コーナーから外を通って先団を射程圏に捉えると、余裕さえ感じさせる手応えで直線での攻防に入る。

 かつてテイオーの手綱をとった岡部幸雄騎手が手綱をとるビワハヤヒデが先に抜け出してゴールを目指すが、そこへ豪快な末脚を繰り出して猛追してきたのがトウカイテイオーだった。ぐいぐいと差を詰めて並びかけると、最後は鞍上の叱咤に応えてビワハヤヒデを半馬身差に降して、堂々と先頭でゴールを駆け抜けた。

 この”奇跡の復活劇”に観客は一気に燃え上がり、ウィナーズサークルでインタビューを受けた田原騎手は、「日本競馬の常識を覆したのはトウカイテイオー自身です。彼を誉めてください」とコメントし、その瞳に涙を浮かべた。
 
 また後日、筆者が取材した際に田原騎手は、「最後はさすがにテイオーも休養明けが堪えてへこたれそうになっていたが、気合をつけると最後まで頑張ってくれた。やはり並の馬にできることではないよ」と感慨深げに語った。

 そして「中364日でのGⅠ勝利」という最長記録は、レースから30年近く経ったいまも破られていない。

 翌年も現役続行が決まったトウカイテイオーだったが、その後も筋肉を痛めたほか、4月には左前肢橈骨に再び骨折を発症。さすがの”奇跡の馬”もターフへ戻ることはできず、現役を引退が決定。翌春から、その優れた能力が高く評価され、北海道・早来町の社台スタリオンステーションで種牡馬入りし、2013年に急性心不全で死亡した。25歳だった。

 思えば、日本ダービーを制して以降のトウカイテイオーは骨折、故障との闘いだった。波乱万丈の現役時代、そこから幾度も立ち上がった不屈の魂と、特異なフットワークから生み出される弾むようなフットワークと爆発力は、いまも往時のファンの記憶に深く刻まれている。

文●三好達彦

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