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【名馬列伝】最高のライバル・ダイワスカーレットとの出会い。ウオッカは”64年ぶり”の偉業を競馬史に刻む日本ダービーへ<中編>

三好達彦

2022.10.29

 オーナーの谷水もこのプランを早くから意識していたため、牝馬クラシックのみならず、皐月賞、日本ダービー、菊花賞(GⅠ、京都・芝3000m)への出走登録も済ませていた。桜花賞に敗れたことから一時は正道であるオークスへ向かおうという意見も出たものの、最終的に陣営が下した判断は、日本ダービーへの出走という果敢なものだった。

 ウオッカは重賞3勝のフサイチホウオー(これもまた松田国英調教師の管理馬である)、皐月賞馬ヴィクトリーに続き、単勝オッズ10.5倍の3番人気に推されて日本ダービーの大舞台を迎えた。

 レースはウオッカの独壇場となった。中団のやや後ろ目を追走したウオッカは直線で外へ持ち出すと末脚が爆発。逃げるアサクサキングスを豪快に差し切ると、3馬身もの差を付けてゴールを駆け抜け、観る者たちに唖然とさせるような強さを披露した。

 記録上は1943年のクリフジ以来64年ぶり、史上3頭目となる牝馬の日本ダービー制覇ということになる。しかし、馬資源が乏しかった戦前、戦中の記録を、年間の生産頭数が一時は1万頭にも達した2000年代と同じテーブルに乗せて比較するのにはいささか無理がある。ウオッカの偉業はまさに歴史的な出来事だった。
 
 一方のダイワスカーレットはオークスの前に体調を崩して出走を回避。休養で立て直しを図って臨んだ秋はステップに選んだローズステークス(GⅡ、阪神・芝1800m)を快勝すると、秋華賞(GⅠ、京都・芝2000m)、エリザベス女王杯(GⅠ、京都・芝2200m)と3連勝。続く有馬記念(GⅠ、中山・芝2500m)でも2着に食い込んで、牡馬とも互角に戦える力を見せた。

 ウオッカは宝塚記念(GⅠ、阪神・芝2200m)を8着に敗れたため、日本ダービー制覇の直後に明かされていたフランスの凱旋門賞(GⅠ、ロンシャン・芝2400m)への遠征プランが白紙に戻された。そればかりか、秋華賞(3着)と有馬記念(11着)でダイワスカーレットの後塵を拝すなど、勝利に見放された悔しいシーズンを送った。ちなみに、エリザベス女王杯は跛行のため出走は取り消した。

 2頭のライバル物語は4歳となる翌2008年の秋に向かって続いていく。<後編に続く>

文●三好達彦

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