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上野由岐子は実は“剛速球投手”ではなかった!? 五輪決勝で見せた「上野ボール」に隠されたもう一つの顔

矢崎良一

2021.09.11

上野が鋭い眼光で見据える先には、世界の頂点が見えているのは間違いない。だからこそ、彼女は日本が世界に誇るエースなのだ。(C)Getty Images

上野が鋭い眼光で見据える先には、世界の頂点が見えているのは間違いない。だからこそ、彼女は日本が世界に誇るエースなのだ。(C)Getty Images

 東京五輪では、上野が日本リーグでデビューした2001年に生まれた20歳の後藤希友(トヨタ自動車)が、日本代表の次の時代を担うエース候補として台頭した。左腕からのMAX113キロのストレートは、無限の可能性を体現している。それでもまだ、早急な世代交代を求めるのは酷に思えてしまう。これまでも「ポスト上野」と呼ばれる逸材はいたが、誰も上野を超えるどころか、並走すらも出来なかった。

 見方を変えると、上野は、もう20年も日本のエースであり続けていることになる。

 金メダル獲得を手放しで喜ぶ年配の関係者を尻目に、現場で強化や普及に取り組んでいる若手の指導者たちは、そうした状況に危機感を募らせている。

「(上野は)まず身体のサイズやポテンシャルからして凄い。そこに技術や心の部分も高いレベルで備わっている。あれだけの逸材はスポーツ界全体を見てもなかなかいないわけで、それがソフトボールにいてくれたことが奇跡みたいなものですから。そう考えたら、後継者なんて、簡単に出て来るわけがないんです。上野が頑張ってくれているうちに、分母(競技者人口)を増やす努力をしていかないと」
 
 13年ぶりの金メダルを置き土産に、再び五輪競技から除外されるソフトボール。それでも、2028年のロサンゼルス五輪は、ソフトボール王国アメリカでの開催だけに再び復活の気運も生まれている。

 東京五輪を花道に引退も囁かれていた上野だが、再開した日本リーグではオリンピックの疲れも見せずに登板を果たし、元気な姿を見せている。また最近は、ロス五輪を目指したい思いも口にするようになった。

 もしそれが実現したら、そのとき上野は46歳。さすがにバットをへし折るような剛速球は無理かもしれないが、多彩な変化球を操りながら、世界の強打者を次々に翻弄していく姿を想像すると、それはそれでロマンがある。レジェンドの今後から目が離せない。

取材・文●矢崎良一

上野コラム前編:「そこらの打者には打たれっこない」上野由岐子が東京五輪で見せつけた20年越しの“本気”

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