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【不正投球問題の本質:後編】投手たちは規制に猛然と反発。だが、彼らは本当に被害者なのか?<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2022.01.03

「スパイダータックを使っているか?」と会見で聞かれて答えられなかったコール。実際に規制後は回転数が低下し、“クロ”とみられている。(C)Getty Images

「スパイダータックを使っているか?」と会見で聞かれて答えられなかったコール。実際に規制後は回転数が低下し、“クロ”とみられている。(C)Getty Images

 2021年6月に発覚した当時、球界で大きな話題を集めていた「不正投球」問題。投手がボールに粘着物質を付着させることはそれまで黙認されていたが、回転数向上のため“悪用”するケースが目立ったことから、MLB機構が規制を強化。シーズン途中での措置に投手たちは一斉に猛反発した。だが、彼らは本当に“被害者”なのか。事態を広い視野で捉えてみよう。

※スラッガー2021年9月号より転載(時系列は7月16日時点)

 6月4日、『スポーツ・イラストレイテッド』電子版が不正投球の蔓延についての記事を発表し、一連のスキャンダルを「新たなステロイド」と呼んだ。しかし、マンフレッドが語っていたように、MLB機構は今年3月の時点で問題を追及することを決めていた。記事によって、重量挙げの選手が重いバーベルを持ち上げやすくするために開発されたスパイダータックという粘着物質がとりわけ悪名を馳せた。

 6月8日、会見でスパイダータックを使ったことがあるかどうか訊かれたヤンキースのエース、ゲリット・コールははっきり否定できなかった。

「正直言って、どう答えていいか分からない」。約15秒間にわたって答えを探していたコールは言った。「ベテランから若手、前の世代から今の世代へと受け継がれる習慣があるんだ」

 この答えによって、コールは一連の不正投球問題の象徴的存在となった。昨オフ、スピンレートの高さが買われて1年1000万ドルの契約を得たギャレット・リチャーズ(レッドソックス)は、新しい投球スタイルを確立しなければならないことに対して、公然と不満を漏らした(「これまでのキャリアで、今回みたいな変更を迫られたことはなかった」、と彼は言った)。
 
 レイズのエース、タイラー・グラスノーは6月14日に負った故障をルールの厳格化のせいだと非難した。彼はその試合で右ヒジ靭帯の部分断裂と右前腕の屈筋を痛めた。グラスノーによれば、日焼け止めとロジンの混合物を使えなくなったため速球とカーブを強く握らざるを得ず、それが腕の異常につながったのだという。

「シーズンの真っ最中に、それまでとまったく違うことをしろなんて正気の沙汰じゃない」と彼は言った。「こんなのバカげている。何らかのギブ・アンド・テイクがあるべきだ。ただ取り上げるだけで何も見返りがないなんておかしい。ピッチャーはボールをちゃんとコントロールしたり、しっかり握ることができる必要があるんだ」

 投手はボールをコントロールするために異物を必要としているという考えを、マンフレッドは退ける。不正投球がはびこっていた今シーズン序盤、死球の割合が記録的なレベルで上昇していた、と彼は指摘する。ただ、それがたとえ事実だとしても、メッツのスラッガー、ピート・アロンゾは同意しない。
 

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