MLB

大物FA獲得にA-RODの復帰、松井秀喜のMVP…ヤンキース27度目の栄冠までの軌跡【2009年ワールドシリーズ】

マーク・ファインサンド

2020.01.13

開幕前から世界一有力候補に挙げられ、結果も下馬評通り。さすがはヤンキースらしい横綱相撲だった。(C)Getty Images

 2010-19年のディケイドで、ヤンキースは世界一はおろかワールドシリーズに立つことすらなかった。しかし、今オフはFA最大の大物ゲリット・コールを8年3億2400万ドルの超大型契約で迎えた。あの頃のように。

 2009年、ヤンキースが最後に世界一となったこのシーズンは、08-09年のFA市場で注目を集めたCC・サバシア、マーク・テシェーラ、AJ・バーネットを補強し、彼らの活躍もあって世界一まで駆け上がった。コールを獲得した今、改めてヤンキース27度目の世界一の軌跡を振り返ろう。

■GMが積極補強を展開、大物FA3人を一挙獲得

 2008年、ヤンキースは13年ぶりにプレーオフを逃した。ブライアン・キャッシュマンGMは、08~09オフシーズンにある計画を立てた。何か手を打たなければならないことを、彼は分かっていた。

 最優先課題が先発投手の補強だったのは疑いもない事実だ。しかし、新たにオープンするヤンキー・スタジアムのクラブハウスと共鳴する新たなリーダーの獲得も同じくらい重要だった。キャッシュマンGMは、彼自身の言葉を借りれば、クラブハウスが「破綻していた」と考えていた。

 00年代にヤンキースがFAで獲得した2大スターのジェイソン・ジアンビとマイク・ムシーナの契約は満了を迎えていた。ボビー・アブレイユ、カール・パバーノ、イバン・ロドリゲスの契約も終わり、補強資金は十分にあった。そこでキャッシュマンGMは、2人の大物FA先発投手に照準を定めた。CC・サバシアとAJ・バーネットである。
 
 FA選手との交渉が解禁されてすぐ、サバシアへの勧誘が始まった。キャッシュマンGMは巨漢左腕に、チームメイトとすぐに仲良くなれるその明るい性格が、彼の腕と同じくらいヤンキースにとって価値があるのだと伝えた。「CCは最重要ターゲットだった」とキャッシュマンGMは言う。「それは、フィールド上の実力だけが理由じゃない」。

 12月にラスベガスで行われたウィンター・ミーティングで、キャッシュマンGMはサバシア側と交渉を持った。2回の交渉で基本的な条件については合意したものの、7年1億6100万ドルの契約が最終的にまとまったのは、キャッシュマンGMが北カリフォルニアにあるサバシアの自宅を訪れてからだった。そしてそれは、サバシアが要求したものだった。

「最初の交渉が終わった時点では、まだニューヨークに行くか決めかねていた」とサバシアは言う。「キャッシュがカリフォルニアに来て、僕らは話し合った。彼は(妻の)アンバーにいろいろ質問する機会を与えてくれて、住む場所や家族のケアについて説明してくれた」。
 
NEXT
PAGE
ライバル球団への移籍がほぼ決まっていたテシェーラの翻意に成功