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MLB

鈴木誠也と大谷翔平――日本が誇る強打者の“渡米前2年間”を徹底比較! データから「共通点」「相違点」を解き明かす<SLUGGER>

大南淳【DELTA】

2022.04.07

1994年生まれという共通点もあるふたり。レギュラーシーズン開幕に向けて期待は高まるばかりだ。(C)Getty Images

1994年生まれという共通点もあるふたり。レギュラーシーズン開幕に向けて期待は高まるばかりだ。(C)Getty Images

 両者の真骨頂であるパワーはどうだろう。ただ、日本での最後の2年間は打席数に大きな差があるため、本塁打数での比較は適切ではない。全打席における本塁打の割合を表す本塁打率で比較しよう(画像内表D)。

 この期間、大谷が4.9%の割合で本塁打を放っていたのに対して鈴木は6.0%で、上回っている。長打率-打率で算出し、純粋な長打力を示すISOでも、大谷の.244に対し鈴木は.283で勝っている。

 大谷はMLBで本塁打王を争ったほどの打者だ。その大谷を長打系指標で上回ったということは、鈴木にも同じ活躍を期待できるということだろうか。しかし、ここで改めて注意したいのが、両者がこの成績を残した年齢だ。鈴木が26~27歳と打者として完成度が十分高まったタイミングであるのに対し、大谷は22~23歳と未熟な時点での成績だった。

 当時の大谷が打者として未完成だったことはデータからもうかがえる。この期間に放った打球がフライ打球割合を比べると、鈴木の56.0%に対し、大谷はほぼリーグ平均レベルの42.3%にとどまっている。フライは長打の源泉といってもいい。

 どれだけパワーがある打者でも、フライを打てなければ、つまり打球に上向きの角度をつけられなければ、長打を多く放つことはできない。NPB時代の大谷は長距離打者であるにもかかわらず、その源となるフライをそれほど打てていなかった。

 ただ、大谷が鈴木を大きく上回る長打指標もある。HR/FBだ。この指標は、放ったフライが本塁打になった割合を表している。先ほど長打発生の源としてフライ割合を挙げた。HR/FBはその次の段階、上がったフライがどれだけ本塁打になっているかを示し、スタンドに運ぶ能力、いわばパワーを探る指標だ。

 これを見ると、大谷の値は19.1%。打ったフライの20%近くをスタンドインさせていたことになる。NPB平均はおおむね7~8%で、鈴木の15.8%が低いわけではないが、大谷の数字がより突出していた。

 当時の大谷はフライを打つ能力こそ秀でていなかったが、フライをスタンドに運ぶ能力については図抜けたものを持っていたようだ。ちなみに、大谷はメジャーでフライを多く放つ打者に変化している。もともと持っていたパワーに、フライを打つ能力も備わったことで本塁打を量産したと考えられる。

 こうして見ると、鈴木に大谷ほどのパワーポテンシャルがあるとは考えづらい。NPBにおいて大谷以上のパワーを示しているからといっても、鈴木も同じように本塁打王を争うことができると想定するのはやや非現実的かもしれない。
 
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