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MLB

2021年の大谷翔平はベーブ・ルースを超えてMLB史上最高の選手になったのか?<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2021.12.31

 一方、1947年のジャッキー・ロビンソン(ドジャース)のメジャーデビューは、史上最もインパクトの大きいシーズンだった。ロビンソンは人種の壁を打ち破り、勇敢さと大胆さを持って白人以外の選手に門戸を開いた。彼はまた、フィールド上でも素晴らしい成績を残した。打率.297、OPS.810、リーグ最多の29盗塁を記録して新人王に輝いた。ロビンソンは2年後、MVPを獲得している。

 球界全体に大きな影響を与えたシーズンは他にもある。1968年、カーディナルスのボブ・ギブソンは22勝、防御率1.12という途方もない成績を残した。だが、“投手の年”と呼ばれた68年を象徴するボブソンの活躍は、得点が少なくなることがファンの関心の低下につながると常に懸念するMLBの危機感を募らせた。翌年、マウンドの高さが15インチから10インチに下げられ、現在もそのまま残っている。

 だが、「史上最高のシーズン」となると、私は1920年のルースを選ばざるを得ない。なぜなら、彼はそれまでに球界が築き上げてきたものすべてを軽々と凌駕し、まったく新しいプレースタイルを生み出したからだ。そしてそのおかげで、ベースボール人気もどんどん高まっていった。ベースボールの進化の形を振り返った時̶̶そこには必ずパワーの重視があった̶̶必ずルースに行き着くのだ。
 
 ホームランの増加を後押しした要因は他にもある。ルースは当時ヤンキースが本拠としていたポロ・グラウンズの狭いライトを有効活用した。また、MLBは当時、スピットボールの使用を禁止しようとしていた。さらに、1919年のワールドシリーズで起きた八百長事件〝ブラックソックス・スキャンダル〞も、ルースの人気上昇につながったと、野球史家のビル・ジェームズは述べている。他の時代だったら、オーナーたちは「ルースを邪魔するために何か行動を起こしていただろう」とジェームズは指摘している。彼らは、ルースがベースボールを愚弄していると考えていたのだ。だが結局、オーナーたちはルースに自由にさせた。そこから球界は力強く前進した。ホームランの数は誰もが想像しなかったほどのペースで増え続けた。

 今後、大谷によってMLBの方向性が大きく変わることがあれば、つまり二刀流選手が数多く登場するようなことになれば、大谷の2021年はルースの1920年を凌駕して「史上最高のシーズン」となるかもしれない。だが、現時点では、球団間で大谷のフォロワーを育てようという動きは特に見られない。もしそれを目指しても、おそらく失敗するだろう。大谷のような天才は100年に一人現れるかどうかだからだ。

 今シーズンの大谷は、アスリートによる史上最も優れたパフォーマンスの一つとして称賛されるべきだ。だが、ずば抜けた成績とその後の球界に及ぼした影響を考えれば、私は1920年のベーブ・ルースこそが「MLB史最高のシーズン」だと思う。

文●タイラー・ケプナー/『ニューヨーク・タイムズ』紙

【著者プロフィール】
ペンシルベニア州出身。13歳で自作の雑誌を制作し、15歳でメジャーリーグの取材を始める。大学卒業後、『シアトル・ポスト・インテリジェンサー』紙を経て、『ニューヨーク・タイムズ』紙でメッツ、ヤンキースの番記者を務め、2010年からナショナル・ベースボール・ライターとなった。Twitter IDは@TylerKepner。

※スラッガー11月号より加筆修正の上、転載

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