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6度目のNBAファイナルに挑む40歳、ヒートのハズレムが「ビッグブラザー」と呼ばれる所以

小川由紀子

2020.10.01

ヒート一筋17年、6度目のファイナルの舞台に立つハズレム。そのNBAキャリアは挫折からの始まりだった。(C)Getty Images

 ロサンゼルス・レイカーズ対マイアミ・ヒートによるNBAファイナル2020が幕を開けた。

 現地メディアの予想では、レブロン・ジェームズとアンソニー・デイビスの強力デュオを擁するレイカーズが優勢。ウエスタン・カンファレンスを圧倒的な強さで勝ち抜いてきた実力もさることながら、彼らは今年1月に他界した球団のレジェンド、コビー・ブライアントに優勝を捧げるという固い意志で結ばれている。

 対するヒートも、タイラー・ヒロ、バム・アデバヨ、ダンカン・ロビンソンら成長著しい若手に、熟練ガードのジミー・バトラーやゴラン・ドラギッチなど、一癖も二癖もある面子が揃っている。

 そしてもう1人、忘れてはならないヒートの大黒柱が、2003年の入団から球団一筋、これまで3度の優勝を経験している大ベテランのユドニス・ハズレムだ。今季はわずか4試合の出場(プレーオフでは出場なし)にとどまっているが、17年間に及ぶNBAキャリアを地元クラブに捧げた彼は、ヒートのフランチャイズプレーヤーであり、生き証人。今年6月には自身の背番号と同じ40歳の誕生日を迎えた。
 
 キャリア通算5754リバウンドは球団史上1位と、クラブ史に名を残す存在となったハズレムだが、NBA選手になるまでの道のりは決して平坦ではなかった。フロリダ大卒業後にエントリーした2002年のドラフトでは無指名に終わり、その後キャンプに参加したアトランタ・ホークスでも契約を得られず、チャンピオンどころか、NBAでプレーすること自体が暗礁に乗り上げた。

 当時の報道によると、指名漏れの大きな理由は「サイズ」。203cmの身長は、センター/パワーフォワードとしては物足りず、おまけにオーバーウエイトだった。フランスの中堅クラブ、シャロンへの入団が決まった時には、体重計の針は136kgを指していたという。しかし、このフランス行きが、彼の運命を大きく好転させた。

 まず、フランスリーグでの週1試合のペースがうまくはまった。プロ1年目でいきなりの海外リーグ挑戦だったが、このゆとりのあるスケジュールが、自身のプレーの見直しやフィジカルの改善など、じっくりとステップアップできる機会につながったのだ。
 
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