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NBA

アジア人初の1位指名が誕生した2002年。“中国の至宝”を巡る攻防と、人生が一変した2位指名選手の物語【NBAドラフト史】

大井成義

2020.10.15

 ところが、ドラフトロッタリーを1か月後に控えた4月19日、状況を一変させるニュースが地球の裏側から舞い込んでくる。中国バスケットボール界のスーパースター、“歩く万里の長城”ことヤオのNBA挑戦を、所属チームの上海シャークスがついに承認したのだった。

 その発表がなされた日、シャークスはチーム初となる中国リーグ優勝を達成。立役者はもちろんヤオで、プレーオフ決勝シリーズ4試合の平均成績は41.3点、21リバウンド、4.3ブロックという驚異的なもの。シーズン平均でも32.4点、19リバウンド、4.5ブロックと、凄まじい記録を残している。

 ヤオは1999年にもNBA入りが噂されたが、諸般の事情によりその話は立ち消えとなっていた。その後も何度か取り沙汰され、ここにきて実現の可能性が一気に高まったものの、なにぶん相手は中国、最終的にどう転ぶかは不透明な状態だった。所属チームが許可を出したところで、中国バスケットボール協会(CBA)や、代表チームを管轄する国家体育総局が反故にする可能性が少なからずあった。
 
 それでも、ヤオのNBA加入の可能性が現実味を帯びてきたことで、ロッタリー上位チームは俄然色めき立つ。ヤオは5月1日にシカゴでワークアウトを開催。中国の至宝を視察しようと、多くのNBAチームがGMやスカウトを送り込んだ。

■中国との粘り強い交渉の末にロケッツがヤオを1位で指名

 この年のドラフトロッタリーで、1位指名権獲得率が最も高かったのはウォリアーズとブルズの2チーム(22.5%)。それにグリズリーズ(当時バンクーバー)、ナゲッツ、ロケッツが続いた。抽選の結果、ロケッツが8.9%というわずかなチャンスをモノにし、1位指名権を奪取する。チームの代表者としてロッタリーに参加した若きエースのスティーブ・フランシスは、満面の笑顔で喜びを表わした。

 ロケッツに続く上位の指名順は、ブルズ、ウォリアーズ、グリズリーズ、ナゲッツに確定する。ヤオとウィリアムズに次いで上位指名が有力視されていたのは、同じくデューク大3年のマイク・ダンリービー、カンザス大3年のドリュー・グッデン、コネティカット大2年のカロン・バトラーといった面々だった。
 
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