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NBA

アジア人初の1位指名が誕生した2002年。“中国の至宝”を巡る攻防と、人生が一変した2位指名選手の物語【NBAドラフト史】

大井成義

2020.10.15

1位指名のヤオは2011年に30歳の若さで引退するまで、8年間で平均19.0点、9.2リバウンドの好成績を記録。16年には殿堂入りも果たしている。(C)Getty Images

1位指名のヤオは2011年に30歳の若さで引退するまで、8年間で平均19.0点、9.2リバウンドの好成績を記録。16年には殿堂入りも果たしている。(C)Getty Images

 ウィリアムズはブルズから解雇された後、モチベーショナル・スピーカー(人々を奮い立たせるような話をする演説家)として活動しながら、『ESPN』、『CBS』などのテレビ局でカレッジ・バスケットボールのアナリストを務めた。2015年にはNBAドラフトの中継番組の解説者に抜擢、翌2016年1月には『Life Is Not an Accident』というタイトルの自叙伝を出版し話題になった。長らく『ESPN』のカレッジ・バスケットボールのアナリストとして活躍していたウィリアムズだったが、2019年、ついにNBAの番組に起用されている。

 一方、ヤオは足と足首の故障に悩まされ続け、2011年のオフに引退を表明。ロケッツが期待した、リーグを制圧し、チームに優勝をもたらすレベルのセンターにはなれなかったものの、オールスターに8度選出され、8シーズンのキャリア平均は19点、9.2リバウンド、1.89ブロック。その人間離れしたサイズや、中国人のスターNBA選手という特異性、そして何より親しみのあるキャラから、多くの企業の広告塔としても活躍した。
 
 2009年には財政難に陥っていた古巣の上海シャークスを買収。引退後、野生動物の保護運動に情熱を傾け、アフリカに何度も足を運んでいるという。アジアでは今なお象牙や犀角の需要が高く、殊に中国は世界最大の象牙市場。その需要を満たすために横行するアフリカ象やサイの密猟、違法取引、そして消費を食い止めようと、ヤオは2012年にドキュメンタリーフィルムを制作した。

“ヤオのアフリカへの旅”と題されたブログの中で、種の保存のためケニアで保護されている、地球上に3頭しかいない(2016年当時。2年後に最後のオスが死亡し、現存するのはメス2頭のみ)絶滅危惧種キタシロサイと戯れたヤオは、次のように綴っている。

「巨大でパワフルな動物だ。1頭が体を押し付けてきた時、シャックをガードしている時のことを思い出したよ」

 ジェイ・ウィリアムズとヤオ・ミン。2002年のNBAドラフトで主役を演じた2人は、人生の第二幕を、そしてそれぞれ夢に見た道を、まっすぐ、ひたむきに歩んでいる。

文●大井成義

※『ダンクシュート』2016年5月号掲載原稿に加筆・修正。

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