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NBA

ロビンソン、キッド、ヒル…無風の1994年ドラフトの舞台裏で起きた予想外のトラブルとは?【NBAドラフト史】

大井成義

2020.09.25

3位指名のヒルは、1997年にオールNBA1stチームに選出。一時は「ジョーダンの後継者」とも称されたが、2000年に足首を故障し、それ以降は全盛期の輝きを失った。(C)Getty Images

3位指名のヒルは、1997年にオールNBA1stチームに選出。一時は「ジョーダンの後継者」とも称されたが、2000年に足首を故障し、それ以降は全盛期の輝きを失った。(C)Getty Images

 トラブルはそれだけに留まらなかった。ドラフト本番の数日前、主役を務めるはずのロビンソンがドラフト会場への出席をボイコットすると、代理人のチャールズ・タッカーが地元メディアに語ったのだった。そして、「もしロビンソンがドラフトに参加しないなら、キッドとヒルも出席しないだろう」とタッカーは主張した。トップ3が出席しないドラフトなど前代未聞である。

 タッカーがボイコットに言及した最大の理由は、ドラフトの正当性に対する疑問と不満からだった。彼の話をざっくりまとめると、「ドラフトは違法。なぜなら、ドラフト対象選手との間に協定が結ばれていないから。リーグと労使協定を結ぶまでは、選手はどのチームにも行くことができる」という大胆なもの。

 タッカーは1980年代にマジックやアイザイア・トーマスの代理人を務めた経験を持つ実力者。調べてみると、バックスとの契約交渉をより有利に進めたいがため、駆け引きの材料としてボイコットを主張したという見方もあるようだ。タッカーは、「NBAはドラフトで大金を稼いでいる。ドラフトでトップ3の選手が指名チームの帽子を持つだけで大金が動く」とも語っている。要約すれば、「ドラフトでリーグばかり儲けてずるい、それなら選手側にも考えがある」といった感じだろうか。
 
 なお、ヒルはその数日前、「ドラフトにワクワクしている。夢が叶う瞬間だ。ボイコットやストライキは考えていない」とインタビューで答えている。

■“ファブ・ファイブ”の2人もウェバーに続いてNBA入り

 6月29日、ドラフト当日。タッカーの話は単なるハッタリだったのか、それとも裏約束で何らかの条件を引き出せたのか、ロビンソンは欠席せず、キッドもヒルも無事出席した。セレクションは予想通りに進み、1位のバックスがロビンソンを、2位のマブズがキッドを、3位のピストンズはヒルを指名。4位以降も特に大きな異変は起こらず、波風のないドラフトとなった。
 
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