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NBA

ロビンソン、キッド、ヒル…無風の1994年ドラフトの舞台裏で起きた予想外のトラブルとは?【NBAドラフト史】

大井成義

2020.09.25

ロビンソンは平均21.9点と新人離れした得点力を見せたが、強欲な契約交渉で悪印象を与えたせいか新人王を逃す。(C)Getty Images

ロビンソンは平均21.9点と新人離れした得点力を見せたが、強欲な契約交渉で悪印象を与えたせいか新人王を逃す。(C)Getty Images

 案の定、1位指名のロビンソンはドラフト後に契約で揉めた。ロビンソン側が要求したのは、ルーキーとしては前例のない13年1億ドルという法外なもの。交渉は1か月にも及び、レギュラーシーズン開幕の前日に10年6800万ドルでなんとか合意に達した。その金額はルーキーとして史上2位(1位はクリス・ウェバーの15年7400万ドル)であり、この翌年からリーグはルーキーのサラリーに上限を設けたため、今後この契約を上回る新人選手が出現することはないだろう。

 契約で揉めたことで、その後ロビンソンには“お金にうるさい強欲な人物”というイメージが付きまとうことになる。そのせいもあってか、それなりの成績(キャリア平均20.7点、6.1リバウンド、バックスでの通算得点はカリーム・アブドゥル・ジャバーに次いで2位)を残しながら、リーグ内における人気のほうは今ひとつパッとしなかった。

 逆に地味ながら人気を博したのが、10位でレイカーズから指名されたエディ・ジョーンズ(テンプル大4年)。高い身体能力を持ち、攻守ともに非凡な才を持つスウィングマンである。リーグを代表する選手になれるだけのポテンシャルを持ちながら、同じポジションにコビー・ブライアントが入ってきたり、トレードされた翌年からレイカーズが3連覇を果たすなど、運に恵まれない選手だった。それでも、誠実で真面目な人柄も相まって、移籍した先々のチームでファンに愛された。
 
 そのほか注目を集めた選手には、1990年代初頭に全米で一大ブームを巻き起こしたミシガン大“ファブ・ファイブ”のジュワン・ハワード(5位ブレッツ=現ウィザーズ)と、ジェイレン・ローズ(13位ナゲッツ)がいる。ファブ・ファイブの中心選手だったクリス・ウェバーは一足先にプロ入りを果たし、前年度のドラフトで1位指名されている。

 息の長い選手だったハワードは、キッドと同じくNBAで19シーズンにわたりプレー(歴代9位タイ)。実直で頼りがいがあり、なおかつ練習熱心な人物で、かのマイケル・ジョーダンが「彼の勤労意欲とキャラクターは素晴らしい」と褒め称えるほどだった。8チームを渡り歩き、最後のヒートではチームの兄貴分としてベンチを盛り上げ、2連覇の陰の立役者となった。

 一方のローズは、ステディなプレーとともに、その生意気かつ物怖じしないキャラで存在感を発揮。プレー以外で印象に残ったのは、ドラフト時に着用したピンストライプ・スーツだ。ドラフト史上、最も醜悪なファッションのひとつとして、今でも語り継がれている。

 指名直後のインタビューの最後に、レポーターのクレイグ・セイガーがローズのド派手なスーツを一瞥した後、「デンバーに行く準備はできている? カウボーイブーツは?」と尋ねると、「そうだな、そのうち探すよ」と苦笑いを浮かべながら答えたローズ。個人的に気に入っているシーンだ。

文●大井成義

※『ダンクシュート』2017年1月号掲載原稿に加筆・修正。

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