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NBA

“静かなる英雄”アレクシー・シュベド。かつてNBAにも挑戦した欧州No.1シューターのバスケキャリアに迫る

小川由紀子

2020.11.08

 この時の心境を彼は「“数ヶ月プレーしたら、また荷物をまとめて次のチームへ”という競技人生は、自分には向いていないと思った」と語っている。

 シュベドの再出発の地は、以前レンタル移籍で所属したヒムキ。1997年に創設された新興勢力だが、急速に力をつけ、今やユーロリーグの常連に。VTBユナイテッド・リーグでも、CSKAの牙城を脅かす存在だ。

 当時“ヒムキはNBAで提示されていた以上のサラリーをシュベドにオファーした”と報じられたが、パヴェル・アスタコフGM(ゼネラルマネージャー)はその噂をきっぱりと否定する。

「彼との交渉は非常に簡単だった。彼が知りたがったのは、クラブが何を目指しているかだけ。金銭面の条件は、彼にとって重要ではなかったんだ」

 NBAから戻った後のシュベドはキャリアの円熟期に突入。ロシア代表でも2017年のユーロバスケットで大会得点王となる活躍を披露し、祖国を準決勝に導いた。マイク・ジェームズ(元フェニックス・サンズほか)やシェーン・ラーキン(元ニューヨーク・ニックスほか)ら、アメリカ人シューターが活躍する現在のユーロリーグにおいても、ヨーロッパ人現役トップシューターの一角を担っている。
 
 そんなシュベドだけに、ヒムキとの契約満了が近づくたびに、NBA復帰の噂が持ち上がる。6月にFA(フリーエージェント)となるはずだった今年も、彼の代理人は「毎年NBA球団から話は来ている。仮にユーロリーグが再開せず、NBAが続行するようであれば、渡米を真剣に検討する」とコメントしていた。

 欧州内でも、ユーロリーグに出場するトップ3クラブが彼の獲得に手を挙げたと言われたが、最終的にシュベドはヒムキとの契約延長にサインした。

「ヒムキはもう長い間、自分の家族のような存在だ。ここのすべてが好きだし、快適に過ごさせてもらっている。このクラブとともに、自分のキャリアを続けていけることを嬉しく思う」

 力をつけているとはいえ、ヒムキはまだユーロリーグ優勝に手が届くレベルにはない。シュベドほどの能力があれば、もっと多くのメダルやトロフィーを獲得できているはずなのに……と、もどかしく感じるファンは多い。しかし彼はそれよりも、自分が日々楽しく、心地よくプレーできて、何よりやりがいがある場所を選ぶタイプの選手だった。
 
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