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NBA

「若くして死に、不滅の存在になりたい」“ジョーダン超え”に執念を燃やしたコビー・ブライアントの知られざる逸話〈DUNKSHOOT〉

大井成義

2021.01.29

コビーは“ジョーダン超え”を切望していた。それは叶えられなかったかもしれないが、最も“神”に近づいた存在だったことは確かだ。(C)Getty Images

コビーは“ジョーダン超え”を切望していた。それは叶えられなかったかもしれないが、最も“神”に近づいた存在だったことは確かだ。(C)Getty Images

■「若死して不滅の存在になりたい」と語っていた若き日のコビー

 コビーがヘリコプター墜落事故で亡くなった日の翌日、親友だったマッグレディが『ESPN』のインタビューに応じている。自宅のあるヒューストンとスタジオを結んでのロングインタビュー中、ずっと泣きながら、時折号泣しつつコビーの思い出話を語るマッグレディの悲痛な姿を見ていると、胸が締め付けられる思いだった。

 そのインタビューで、マッグレディがかつてコビー本人から見聞きした、ジョーダンに対する尋常ならざる想いを明かしたのだが、それがあまりに凄すぎる内容なのである。マッグレディの打ちひしがれた様子から感じた悲しさとは別に、コビーのあまりの一途さに愕然としてしまった。

 マッグレディはコビーの1年後にNBA入りし、お互い高校から直接プロ選手になったこともあり、2人は特別な関係にあった。コビーが両親と一緒に暮らしていた頃、彼の家によく泊まりに行っていたそうだ。

 コビーとはカラテ映画やジョーダンのビデオをよく観ていたらしく、ジョーダンのプレー映像を観ていると、コビーは特定の箇所で一時停止しては巻き戻し、それを何度も繰り返すので、「お前はいったい何をやってるんだ?」と呆れて言ったという。「それが彼だった」、とマッグレディ。また、コビーはジョーダンの動きを真似し、練習に励んでいたそうだ。

 そして、衝撃の秘話を口にする。
 
「これはクレイジーに聞こえるかもしれないけど、コビーが言っていたことだ。『俺は若くして死にたい』。彼は四六時中そう言っていた。俺はそいつを聞いて、頭がおかしいと思ったよ。彼は、『俺は若死して、不滅の存在になりたい。マイケル・ジョーダンよりもベターなキャリアを過ごして、若くして死にたいんだ』と言っていた。そんなことを言うなんて、マジで狂ってるとしか思えなかった」

 ジョーダンズ・ブルズを追い続け、ジョーダンとも親交の深い著名なスポーツライター、ローランド・レイゼンビーは、2012年にこんなツイートを書いている。

“MJ(ジョーダン)は私にこう言ったよ。「(自分と)比較するに値する仕事をやり遂げたのは、コビーただ1人だ」。”

 ジョーダンに憧れ、ジョーダンのプレーを真似し、ジョーダンを追い抜いて史上最高のバスケットボール選手になることを夢見た“ネクスト・ジョーダン”の真打ちは、夢を叶えることができないまま現役を退き、悲劇の事故により帰らぬ人となった。

“バスケットボールの神様”を超えることはできなかったけれど、神に最も近づき、神に認められた唯一の男。究極の目標こそ達成できなかったが、それでもコビーはNBA史に最大級の爪痕を残すという、とてつもない偉業を成し遂げてみせた。

 2019年、イギリス人のコメディアンであり俳優のジェームズ・コーデンがホストを務めるトークショーにコビーがゲストで出演し、質問に答えられなかったら罰ゲームを受けるというコーナーで、こんな受け答えがあった。

 質問は、「コビー、ジョーダン、レブロンを偉大な選手順にランク付けすると?」というもの。それに対し、コビーは回答を拒否するも、コーデンから促されて仕方なく出した答えは、「俺がベスト。マイケルはその次。レブロンが3番目」。

 番組を盛り上げるためにそう言ったのかもしれないが、実際のところ、本心ではどう思っていたのだろうか。

文●大井成義

※『ダンクシュート2020年5月号』掲載原稿に加筆・修正。

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