ドイツの格下相手の敗戦といえば、初出場のアルジェリアに1-2の敗北を喫したまず1982年スペイン大会が挙げられ、当時のユップ・デアバル・西ドイツ代表監督が戦前に「もし負けるようなことがあれば、汽車に乗って家に帰るよ」と笑顔で語るなど、完全に相手を見くびった末の番狂わせで、試合後に指揮官は「信じられない……」と語るのみで、優勝候補チームは大きな非難と嘲笑を浴びるなど、屈辱にまみれることとなった。
続いて、4年前の韓国戦。こちらは初戦のメキシコ戦を0-1で落とし、2戦目はスウェーデンに辛うじて勝利を飾ってから迎えた最終戦であり、勝点3が必要というプレッシャーの中で、時間の経過とともに焦りが募ったドイツは、多くのチャンスを活かせないまま、終盤に2点を失って早期敗退が決定した。
そして今回。ドイツは前回大会の雪辱を期し、アジアの国相手といえども油断はなく、十分に対策を練っていたはずである。また、初戦ということで前回・韓国戦ほどのプレッシャーもなかっただろう。つまり、番狂わせが起こる要素は少なかったと言えるが、日本は自らの力でそれを起こしてみせた。この事実は非常に重要であり、改めて日本サッカーの成長を感じさせた。
デットマール・クラマー氏の招聘、日本人選手の海外挑戦など、日本サッカーが進化する上で、重要な役割を果たしてくれたドイツだが、その“恩人”を大舞台で下した日本。ドーハという因縁の地で奇跡を起こしたことを、アメリカの日刊紙『The Washington Post』は「W杯に新たな宝物を加えた」と称賛したが、それは日本サッカーにとっても最大の宝物であるだろう。
構成●THE DIGEST編集部
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