マラソン・駅伝

【生島淳が来季の“箱根“を占う】どこよりも早い、大学駅伝パワーランキング!経験者9人が残る駒大が本命か?

生島淳

2021.01.27

駒大が逆転優勝し幕を閉じた箱根駅伝。その立役者となった石川拓慎。写真:JMPA

 なぜ、駒大が優勝できたのか?

 いろいろと分析しつつ、仮説を立てたりしている。それが「箱根駅伝2022」を考えるための土台になるからだ。

 まず、今回の駒大のメンバー編成は、優勝チームとしてはかなりイレギュラーだった。

 これまで私は戦力分析をするにあたって、次の指標を重視してきた。

・経験者数
・出走回数を足し上げた箱根経験値

 まず、10人のメンバーの中で、過去に箱根駅伝を走った選手が何人いるか。そして彼らが何度箱根を走っているかを示す「経験値」を足し上げていく。

 もちろん、絶対的な指標ではなく、多くの監督や選手の取材の中から得られた言葉を基にして考えたものだ。

 たとえば、青学大の原晋監督は、区間配置を考えるにあたって、「同じ区間の経験者を優先します」と常々話しているし、駒大の大八木弘明監督からは「練習を積み上げてきた上級生は、やっぱり箱根では頼りになるよ」といった言葉を聞き、そうした取材経験から導き出した私なりの指標である。

 では、過去3年間の優勝チームの経験指標を見てみよう(カッコ内は経験者)。

2018年 青学大 5人 9回(森田歩希/田村和希/梶谷瑠哉/小野田勇次/下田裕太)
2019年 東海大 5人 9回(鬼塚翔太/舘澤亨次/中島怜利/阪口竜平/湊谷春紀)
2020年 青学大 4人 5回(吉田圭太/鈴木塁人/飯田貴之/岩見秀哉)

 過去の例から見ても、優勝するためには5人の経験者が必要だといまも思っている。2020年の青学大は経験者が4人だったが、4区にマラソンで大活躍中の吉田祐也、9区に1年から駅伝に出場していた神林勇太がおり、経験値は相当高かったというのが私の見立てだった。
 
 ところが、駒大はこうした過去のデータをぶっ飛ばした。

2021年 駒大 3人 3回

 10人中、箱根の経験者は2区の田澤廉(2年)、3区の小林歩(4年)、10区の石川拓慎(3年)の3人だけで、しかも同じ区間を走った経験を持つのは石川だけだった。

 驚いたのは、大八木監督が経験値を持つ4年生の神戸駿介、加藤淳、小島海斗、伊藤颯汰の4人を外し、3人の1年生、白鳥哲汰(1区)、鈴木芽吹(5区)、花尾恭輔(7区)と3人の起用に踏み切ったことだ。

 過去3年間、優勝チームで1年生を起用したのは、2020年、青学大の2区を走った岸本大紀だけである。経験値が重視される箱根駅伝で、大八木監督はセオリーを無視し、実力主義、コンディションを重視した選手起用で成功を収めたことは特筆に値する。

 還暦を過ぎて、大八木監督は指導者としては新たなステージに突入したように思える。