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【名馬列伝】異質な「変則二冠」の概念を大偉業に変えたキングカメハメハ。名伯楽の慧眼は大種牡馬としての“最強時代”を築いた

三好達彦

2023.08.15

2004年の日本ダービーを制したキングカメハメハ。鞍上の安藤騎手にとっても悲願のタイトルだった。写真:産経新聞社

「変則二冠」。皐月賞(GⅠ、中山・芝2000m)をスルーし、NHKマイルカップ(GⅠ、東京・1600m)から日本ダービー(GⅠ、東京・芝2400m)のタイトルを狙うことをそう呼ぶようになって久しい。この異質なローテーションを考案、実践したのが調教師の松田国英(2021年に定年で引退)である。

 同調教師が、このローテーションを採用した理由として、英国の競馬ローテを参考にした説があるという。まず、英国のクラシックは2000ギニー(約1600m)からダービー(約2400m)と続くので、奇をてらったものではない、というのがひとつ。もう一つは、この二つを制するとマイル戦を勝てるスピードを持ち、なおかつ2400mというチャンピオンディスタンスもこなせるスタミナも持っていることが証明できるので、種牡馬としての価値が高まるというのが、その理由である。

 なかでも松田が重要視したのは、種牡馬、繁殖牝馬として高い価値を持たせる形で牧場へ送り出したいという思いで、後者の理由によるところが大きい。
 
 松田が初めて「変則二冠」を狙ったのが2001年シーズンのクロフネである。しかし、クロフネはNHKマイルカップは制したものの、日本ダービーは5着に敗れてしまった。その翌年にはタニノギムレットで再度挑戦し、日本ダービーは制したが、その前のNHKマイルカップは3着に終わっていた。

 そこで三の矢として「変則二冠」にチャレンジさせたのが、2004年シーズンのキングカメハメハである。
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