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大学野球

慶大躍進の一翼を担ったボーダーレスのアナリスト部隊――慶大助監督・竹内大助の知られざる野球人生【第4章】

矢崎良一

2022.03.11

助監督としてアナリスト班の構築に奔走した竹内。彼には明確なビジョンがあった。写真提供:竹内大助

助監督としてアナリスト班の構築に奔走した竹内。彼には明確なビジョンがあった。写真提供:竹内大助

 最初の1年間、竹内は佐々木にシンプルな指示を出した。「なるべくグラウンドに降りる時間を増やしてほしい」というものだ。

 言葉通り、佐々木は具体的なデータに手を付けるよりも、とりあえずグラウンドに出て、練習を見たり、選手と話をすることを心掛けた。

「アナリストにいちばん重要なのはコミュニケーション能力だよ」と竹内はよく口にした。

 佐々木はそれを常に意識して選手たちと接した。選手のなかでも、データリテラシーには個人差がある。いくらアナリストの言っていることが正しくても、その選手との間に信頼関係がなければ、データは活かしきれない。そのためにコミュニケーション能力が必要となるのだ。そこは単なるセイバーオタクとは一線を画す。竹内はチーム内SEを求めていたわけではない。

「グラウンドにいれば、選手も僕を認識してくれるでしょうし、そこで多少なりとも信頼とかが芽生えてくれれば、と思っていました。やっぱり普段グラウンドにない人間に話をされても、選手だってなかなか聞いてはくれないと思うんです」

 佐々木は言う。また、グラウンドにいれば、選手個々の性格や気性だけでなく、リーグ戦期間中のチームの動きもある程度理解することが出来る。企業が新入社員に行うOJT(職場内研修)に通じるところがある。

 アナリスト班としての具体的な仕事は、まず、リーグ戦中は4年生の部員を中心に構成されたデータ班のサポート。もともとシーズン中は、メンバー外の学生たちでデータ班が組織されている。対戦する5チームの各データについては、既存のデータ班が作り上げてきたシステムがあり、そこに試合ごとに更新される新しいデータをインプットしていけば、内容的には事足りるものになっていた。

 ただ、これまでデータ班が担っていたのは相手チームの分析。一方、自チームの分析というのは、人員不足もあって、どうしても手薄になっていた。そこを佐々木たちを中心としたアナリスト班に任せることで、もっと充実させたかった。

 ラプソードについても、まだチームとして使い切るところまでいっていない。リーグ戦は各試合、神宮球場に設置されたトラックマンからデータを収集することが出来る。とはいえ、入手するデータはいわば数字の羅列であり、それを選手が見やすい形に落とし込むところまでは人員を割けずにいた。

 そこで、神宮球場のトラックマンから取得したトラッキングデータや、自分たちで収集している統計的なデータを、選手全員が理解しやすい形にビジュアル化して伝達する作業に、アナリスト班が中心になって取り組んだ。

 竹内は目指したビジョンを次のように語る。

「今までも数字は取っていたけど、それをデータに変換し切れていなかったんです。変化球の変化量を数字で言われても、なかなか頭でイメージできないでしょう。まずはそれを、データとして見られるようにしたい。

 同時に、選手たちに、そのデータを読み解く力を育てていかなくてはなりません。それを指導者からの働きかけではなく、アナリストが中心になって、選手たち主体でデータ分析ができるようになるところまで作り上げて、そのデータ分析によってチームの意思決定が行なわれたり、行動変容が起こるようなアプローチをしてほしいんです」
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