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大学野球

慶大躍進の一翼を担ったボーダーレスのアナリスト部隊――慶大助監督・竹内大助の知られざる野球人生【第4章】

矢崎良一

2022.03.11

「プロ野球のアナリストの方々から見たら、その程度のことしかやってないのかと思われるかもしれないし、IT産業の専門家からしたらまだまだ全然活用しているうちに入らないのかもしれませんが、慶應大学の野球部にとっては大きな一歩だと思っています」

 竹内は少しだけ誇らしげにそう言う。

「こういうことを、属人的な能力で終わらせたくなかったというのが、まず出発点でした。個人ではなく、組織に組み込んでいきたい。そういう意味では、林さんが前任の助監督だったからこそ作り上げられたものだし、“2世代のプロジェクト”と言うことも出来ますね。

 また次にポストに就く方が、まったく別のフィールドで新しいことをやっていかれるのか、今あるものを成熟させていくのか、そこはもう僕にはわからないことなので、OBとして応援させていただくだけです。ただ、学生たちに落としてきたものは、繋がっていくでしょうから、そこはしっかりと任期のギリギリまで手を付けさせていただきました」

 3年間の任期を終えて昨年末に退任した竹内。決まっていたこととはいえ、後ろ髪を引かれる思いはなかったのだろうか?

 竹内は、「それは現役を退いた時と同じで、いつ辞めたとしても思うんじゃないですかね。1年引っ張ったら、1年後にそう思うでしょうし」と笑う。

「まあ本心を言えば、アナリストの部門はまだ成長段階なので、もうちょっと見ておきたいという気持ちはありました。それと、3年間やってきて、今度の新4年生が入学した時に一緒に入ってきたので、卒業するまでワンサイクル見届けたいなという気持ちも。でも、3年というサイクルで切っていることによって、学生たちは必ず2人の助監督と一緒に野球をすることになります。これはすごく良いことだと思うんです。

 良くも悪くも多感な時期に、いろんな大人と関わったほうがいい。まして今はこのコロナ禍で、人と出会うチャンスが減っている社会状況なので、なおさらそういう身近にいる助監督のような立場の人が変わっていくことで、いろんな感覚を持った人と話す、議論をする機会が生まれる。そういう経験は学生時代にしておいたほうがいいですから」

 昨年の4年生が、竹内が就任した時に前任の林とのギャップに戸惑ったように、3年生以下の部員たちは、竹内と新しい助監督のギャップに戸惑うことがあるのかもしれない。それもまた、彼らにとっては良い経験だと竹内は思っている。

―――第5章へ続く―――

取材・文●矢崎良一

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